うわあ。

日本の女子大生が書きたいことを書くブログ

先生に片思いしていた話


私が高校生の頃、数学の先生のことが好きだった。仮にS先生とする。S先生は落ち着いていて、優しくて、背が高くて、手が大きくて、話しかけるとにやにやしていて、でもだから好きになったわけじゃなくて、でもなんで好きになったのかわからないけれど、私はS先生のことが大好きだった。

S先生には高校3年生の夏期補習(夏休みに希望者が集まって授業を受ける、主に大学受験対策)で教えてもらった以外は、担任になったこともそれ以外の授業を受けたこともなく、接点なんてほぼなかった。
けれど高校生3年生の夏から私は、わからない問題をS先生のところに聞きにいくようになった。
放課後、部活や勉強以外の生徒が帰ったころ、数学準備室(数学の先生のみの職員室)のドアをノックし、顔をのぞかせて、「失礼します、Sせんせー、今いいですか」と言って、中に入る。先生が、先生の隣の椅子をすすめてくれる。「これなんですけど、、」と問題集を開くと、S先生はまず自分でそれを解いて、その後で私に教えてくれる。「ちょっと待ってよー、」と言いながらさらさら解いていき、「できた、答えは?」と言うので教えると、にやにやしながら「合ってたー」と言う。あー、いい時間だなあ、と思っていた。(この時点ではまだ何も勉強になっていない。)

何度もS先生のところに行くので、それからは準備室のドアを開けただけで、S先生が「きたー」と言ってくれるようになった。また、放課後空き教室で、私が一人勉強しているところに先生が通りかかると、ドアを開けて話しかけてくれるようになった。

夏、先生が問題を解くのを待っているとき、やたら暑がっていた私に「ん、」とうちわを渡してくれた。
秋、2年生の修学旅行の引率だった先生は、帰ってきてから私にお土産をくれた。放課後人の少ないときに、駐車場まで二人で歩き、先生が車からこまごまとした個包装のおかしをたくさん出してきてくれた。個人的に先生からお土産をもらったのは、しかもこんなにもらったのは、生徒の中で私一人だと思った。
冬、あめちゃんをくれた。センター試験の前日、はげましてくれた。

先生との一つ一つの出来事に、どきどきして、嬉しくなって、些細なことで落ち込んで、悲しくなって、それはまぎれもない片思いで、受験の天王山も横目に、片思いの天王山に足を踏み入れ、まだ齢17の生娘が、いっちょまえに34歳の男性に憧れていたのである。

私は文系だったが、先生のところに行きたくて、どの教科よりも数学の勉強をした。わからない問題、先生に聞きにいける問題に出会うため、そこそこ難しい問題集に手を出した。その結果、数IAの全国模試(記述式)で満点をとり、全国1位になったときもあった。S先生は半笑いだった。「こんなに数学伸ばして、どこを目指してるの(笑)」と言われた。

もうS先生には、私の気持ちはばれていたと思う。
体育祭の日、友だちにぐいぐい背中を押されながら「先生と写真撮りたい。」とやっと言った私は、
放課後、外に面した廊下で、手すりにもたれて夕日に染まった景色を見ながら、2人で他愛もない会話をした私は、
現像した体育祭の日のツーショットを、かわいい封筒に入れて渡してきた私は、
先生にはどんな風に見えていたのだろう。
あんな写真、捨てるわけにもいかないし、とっても困ったと思う。もう捨てられているのかもしれないけれど。

卒業式の日に、みんなが帰ってから先生のところに行って、「ちょっと来てほしいです」と言って誰もいないところまで歩いて、思いを告白、しようとさんざんシミュレーションして、勇気が出ずやめた。そのかわりに、思いを綴った手紙の最後に、もしよかったら連絡をください、とメールアドレスを書いて渡した、ということもしなかった。だから卒業後に高校を訪ねて、「先生、ずっと好きでした」と言いに行こうと思ったが、やはり勇気がなかった。そうだ、何もしなかった。そのまま大学生になって、2年目も過ぎようとしている。

今でもまだ、いつかどこかで先生に会えたら、という気持ちがある。けれど、自分から会いに行く勇気は出ずにいる。それに最低なことに、今お付き合いしている彼氏のことが、すごく大切で大好きだ。このまま一生、S先生と会うこともないまま、高校時代のたった半年の憧れを抱えて、過ごしていくのだと思う。あー、大好きなS先生、一生結婚しませんように。


(かかった時間:約50分)